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同時廃止の上申書を出したら「免責できなくなるけどいいの?」と言われた

裁判所の管轄ごとに必要書類や運用が異なる

 

自己破産申立の添付書類ですが、裁判所によって実にさまざまです。

 

私がよく申立書類を作るのは横浜地裁で、それ以外で経験があるのは10箇所いかない程度でしょうか。

横浜地裁は戸籍が原則不要なのですが、管轄によっては必須だそうです。

また、家計全体の状況を2か月分、通帳を2年分要求するところもあります。

 

次にお話する「同時廃止の上申書」も、横浜地裁ではつけなくても同時廃止になりますが、他管轄では必須のところもあるようです。 (現在もあるのかは不明・・・)

 

免責不許可事由があっても同時廃止になる?

 

答えは「個々の事情と裁判官しだい」です。

 

私が関わったケースでは、結局、管財事件*1になりましたが、免責は無事おりました。

 

 

何年か前の話です。

いつものように横浜地裁の申立書を作っていたところ、

所長先生から「同時廃止の上申書、念のためつけておこうか。」と指示を受けました。

 

通常、この書類をつけなくても、裁判所の判断により同時廃止*2になることが多い個人破産事件。このときの申立人も、預貯金含めほとんど財産が無い方だったので、おそらく同時廃止になるかな、と考えていました。

 

ところが問題が発覚。免責不許可事由*3アリとみなされそうな行為があったのです。

 

この方の場合は「換金行為」(破産法第252条第1項第2号)でした。

クレジットカードで金券を買い、それを安く売って現金化してしまったんですね。

キャッシングができなくなり、苦しくなるとこの行為をしてしまう人がいますが、(斡旋している業者もいるみたいですね・・・看板見かけますし。)破産手続きにおいてはけっこうな危険因子です。

 

免責不許可事由があると、その名のとおり最悪、免責になりません。

ただし、あまりに悪質でなく、きちんと破産手続きに協力すれば、裁量免責*4になる方がほとんどなのではないかと思います。

 

話は戻りますが、この方は免責不許可事由があるので、管財事件になる可能性がありました。しかし、管財費用(当時は20万以上)を払えるお金はありません。日々生きるので精一杯です。なので、その旨を「同時廃止の上申書」にしたため、なんとか同時廃止にしてもらえないか、裁判所にお願いをしようということになったのです。

 

免責できなくなるけどいいの?

 

裁判所からの返答は冷たいものでした。

「同時廃止にしてほしい」って書いてあるから、同時廃止にしてあげてもいいけど、それだと免責おりないよ?免責不許可事由があるから、裁判所としては管財人の調査なしに免責は出せないので。

つまり、このまま同時廃止で進むと、「破産はできるが免責にならない」という最悪の事態になるということ。

 

ご存知かもしれませんが、破産免責は厳密には別個の手続なのです。

破産=借金を返済できないと認めてもらうこと

免責=法的に借金を返済する義務がなくなるということ

 

まぁ冷たいというか、当然っちゃ当然なんですよね・・・。

 

裁判官の裁量ではありますが、借入その他の事情が悪質ではなく、債務が300万円くらいまでであれば、同時廃止になるケースもあると聞きます。

この方の債務は600万円くらいありましたし、換金行為も1度や2度ではなかったので、原則どおり管財になってしまったようです。

 

 同時廃止の上申書は危険なのか

 

「免責できなくなるけどいいの?」と言われてビビりました。

同時廃止にしてほしい=同時廃止で免責にしてほしい

という意味だったんだけど・・・。

なんだか揚げ足を取られたような気分でした。

この上申書を出したことによって、免責不許可の危険性があったということでしょうか?はたまた、ただの嫌味だったのでしょうか?

 

ちなみに、横浜の某支部に同じ書類を提出した際には、

「内容は理解しましたが、管財になってしまいますね~。」

と優しく言われただけでした。

 

実際、破産になって免責がおりないというケースは無くはない(私のまわりでは聞いたことないですが)ですし、前述のとおり破産免責は別物なので、気をつけないといけないということですね。

 

まとめ

裁判官には裁量権がありますし、書記官も人間なので対応が違うことは仕方ないです。

しかし、できれば全国の裁判所で書式を統一してくれると嬉しいな~。

破産以外で、成年後見なんかも経験ありますが、それも書式が異なりますからね。(異なっても必要項目が載っていれば受け入れてくれますが。。)

登記のように、法定添付書類が決まっていたり、規則や先例があればわかりやすいんですがね。

 

でも、登記ほど書類が厳格ではないので、多少の融通がきくという利点もあります。

どちらがよいのか分からなくなってきました(笑)

 

わかりづらいからこそ、専門家の出番があるとも言えますね。

 

またひとつ勉強になりました。

 

ちなみに事務所で参考にしている書籍がこちら。

 

↓ 

破産管財の手引 〔第2版〕 CD-ROM付き

破産管財の手引 〔第2版〕 CD-ROM付き

 

東京地裁で管財人が運用していた実例などが載っているので、

裁判所側の考え方がわかり、申し立てをする際にけっこう参考にしています。

 

 

 

 

*1:管財事件とは、申立人に財産がある場合や、免責不許可事由があることにより調査が必要と裁判所が判断した場合に取られる、いわゆる正式な破産手続。裁判所が選任する弁護士などの「破産管財人」が財産の管理や調査を行うため、同時廃止に比べて時間とお金がかかります。

*2:同時廃止とは、申立人に、債権者へ分配するほどの財産がないことが明らかな場合に、破産手続開始決定と同時に、破産管財人を選任することなく破産手続きを終了することを言います。現状、個人破産の約9割がこの同時廃止手続といわれています。

*3:(免責許可の決定の要件等)

第二百五十二条    裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
  一  債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。
  二  破産手続の開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、又は信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと。
  三  特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと。
  四  浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。
  五  破産手続開始の申立てがあった日の一年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと。
  六  業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、又は変造したこと。
  七  虚偽の債権者名簿(第二百四十八条第五項の規定により債権者名簿とみなされる債権者一覧表を含む。次条第一項第六号において同じ。)を提出したこと。
  八  破産手続において裁判所が行う調査において、説明を拒み、又は虚偽の説明をしたこと。
  九  不正の手段により、破産管財人保全管理人、破産管財人代理又は保全管理人代理の職務を妨害したこと。
  十  次のイからハまでに掲げる事由のいずれかがある場合において、それぞれイからハまでに定める日から七年以内に免責許可の申立てがあったこと。
イ 免責許可の決定が確定したこと 当該免責許可の決定の確定の日
ロ 民事再生法 (平成十一年法律第二百二十五号)第二百三十九条第一項 に規定する給与所得者等再生における再生計画が遂行されたこと 当該再生計画認可の決定の確定の日
ハ 民事再生法第二百三十五条第一項同法第二百四十四条 において準用する場合を含む。)に規定する免責の決定が確定したこと 当該免責の決定に係る再生計画認可の決定の確定の日
  十一  第四十条第一項第一号、第四十一条又は第二百五十条第二項に規定する義務その他この法律に定める義務に違反したこと。

*4: 前項の規定にかかわらず、同項各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合であっても、裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる。